ここで紹介しているのは、2004-2006年の調査において新石器時代の層から出土した約7,000点の動物遺存体の同定分析結果です。
出土動物種の構成を見ると、ブタ/イノシシが最も多く、同定された破片数の約40-60% を占め、ヒツジ、ヤギ、ウシを加えた4種の合計は約80%に達します。その大部分は家畜個体で、1期からすでにブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシの4種の家畜飼育に依存していたことがわかります。その他の家畜としては、ウマ科の骨が6点、イヌの骨が2 点出土しており、ウマ科の骨のうち、2005年出土の1点はオネガーの可能性があるものの他の2点はロバとみられ、鉄器時代以降の土坑から混入したものと思われます。野生哺乳類ではアカシカが比較的多く、ほかに少数のガゼル、ノロジカ、キツネ、ウサギ、イタチ、モグラが出土しています。2005 年出土の鳥類の中には、シチメンチョウとニワトリが9点含まれ、これも鉄器時代以降の土坑から混入したものと思われます。このほか、は虫類(主にリクガメ)、両生類(カエル)、魚類(コイ科とナマズ科の淡水魚)、甲殻類(カニ)、淡水性の二枚貝が出土しています。
2004 年と2005 年の出土資料に基づいた動物種構成の時期的変化をみると、1期と2期ではブタ・イノシシの骨が、同定された破片数の50% 近くを占める一方、3期になると30%強に減少します。これに対し、ヤギ・ヒツジの割合は時期を追って増加しています。ウシは1期ではヤギ・ヒツジよりも多く、約25%を占めていますが、2期以降になるとヤギ・ヒツジの方が多くなります。一般に南東アナトリアの遺跡では、PPNB後期までにヤギ・ヒツジ飼育への依存度が高まり、出土骨の60%以上をこの2種の家畜が占めるようになります。土器新石器時代の遺跡でありながらブタ・イノシシが多いサラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡の状況は、この地域の新石器時代遺跡の中では特異であるといえます。
新石器時代層出土動物骨の同定結果(新石器時代一括 2004-2006年)
新石器時代層出土動物骨の種構成(2004-2006年)