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<拠点形成計画の概念図>


 研究拠点形成計画の概要

研究拠点形成計画の柱は、以下の4つのオペレーションになります。

1.フィールドプロジェクトへの支援 
これまで筑波大学の各教員により個別に行われていたイラン、トルコ、シリアなど西アジア各国でのフィールドプロジェクトを支援し、その成果についての学術的情報やプロジェクト実施の事務的ノウハウを蓄積する。

2.遺跡・歴史資料救済事業
西アジア各国政府からの要請を受けた文化財緊急救済プロジェクトとして、遺跡や歴史資料の文化財調査および保存事業プロジェクトの立ち上げを計画、実施を行う。

3.西アジア文明研究会の開催 
西アジア文明研究会を定期的に開催し、考古学・歴史学・言語学などの人文学と、地質学・生態学などの環境科学、および化学分析・保存などの文化財科学を融合させた総合的な西アジア文明学の構築を進める。海外からの研究者の招致、海外の研究会への研究者派遣も行う。

4.教育プログラム
各フィールドプロジェクトに際し、フィールド教育プログラムを実施し、調査研究のノウハウを大学院生・学生に教授する。また上記の研究会に合わせて西アジア文明研究センター教育プログラムを実施し、大学院生・学生を西アジア文明学の構築に積極的に参画させる。

 


 

現代社会において、西アジア地域の政治、経済、文化に関する諸問題は、常に世界の不安定要素とされ、世界政治の中でまるで鬼子のように扱われてきました。その背景には、西欧社会によるイスラームに対する偏見や、文明の衝突といった言説の中で西アジアの諸社会が西洋への対立軸として捉えられるなど、西アジア地域が非西洋的な象徴としてのスケープゴートとして捉えられてきた傾向があるといえます。わが国においても、主として欧米というフィルターを通してこの地域が理解され、中東やイスラームという言葉を聞くとすぐに不可解、危険というキーワードが思い浮かぶような風潮が存在しています。

しかし、長年にわたってこの地域と直接かかわり、西アジアの自然や文化の多様性とその社会の豊かさを知っているものにとっては、それは大いなる違和感でしかありません。現在の西アジア社会の特質となっているものの多く、例えば強い血縁集団としての紐帯や、唯一神への深い信仰といったものが、イスラーム社会成立のはるか以前にこの地で誕生し育まれてきたといえるのです。つまり、イスラーム以前の西アジア文明社会の理解なしに、現代のアラブ、非アラブのイスラーム社会の本質を理解することなど到底できないといえます。さらに、西アジア文明を深く知れば、この文明が達成したムギ作農耕や都市社会、キリスト教などが、現代の西欧社会の基盤を形成している事実に突き当たります。西アジア文明の研究は、現代イスラーム社会の理解のみならず、現代世界の根幹部分を正しく理解し相互理解を深化させていくためにも、極めて重要かつ必須の領域なのです。

本イニシアティブ計画では、西アジア地域にかかわる本学のさまざまな人材を組織し、大学院生などの若手研究者を巻き込みながら、複数のフィールドプロジェクトを進行させ、本イニシアティブ期間において西アジア文明の研究拠点を本学に形成するための基盤づくりを行うことを目的としています。


 拠点の運営体制

西アジア文明研究センター構築のために、人文社会科学研究科内に同センター準備室を設置し、本イニシアティブの中核教員が研究員となって運営しています。以下のような役割分担を基本としています。

 ・ 全体総括 (常木 晃)

 ・ フィールドプロジェクト支援 (三宅 裕)

 ・ 遺跡・歴史資料救済事業 (谷口 陽子)

 ・ 西アジア文明研究会の実施 (山田 重郎)

 ・ 教育プログラム (池田 潤)


 研究拠点形成に係る研究の背景

イスラーム研究を専門的におこなう研究機関は日本に多々存在していますが、イスラーム以前の西アジア地域の自然や社会、文化を専門的に研究し、人類の基層文化としての西アジア文明の総合的研究を目指すとともに、専門研究者の育成をおこなっている研究機関は日本国内には見あたりません。翻って欧米を見渡すと、西アジア地域の遺跡調査や古代史研究に長い歴史を持ち、多くの専門研究者を育て、一般への啓蒙活動も行なうなど、イスラーム期以前の西アジアの基層文化研究に多大な成果を上げてきた研究機関は少なくありません。現在、筑波大学には、イスラーム期以前の西アジア地域を主研究対象とする、考古学、歴史学、文化財学、言語学などの研究者が多数在籍しており、それぞれの研究室には、専門研究者を目指す大学院生も数多く在籍しています。また、地質学や植物生態学などの環境科学分野に、西アジア地域で調査経験のある研究者も複数在籍しています。西アジア文明研究センターを構築することで、こうした研究者間の連携を組織し、各研究を統合していくことは、人文科学と自然科学を統合した新たな西アジア文明学を打ち立てる最大のチャンスであるといえます。

 

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