文部科学省

日本学術振興会


研究計画と研究組織
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基本戦略   |  総括班   | 研究項目A01 | 研究項目A02 | 研究項目A03 | 研究項目A04

研究項目 A02:  史料から見た都市性の解明

計画研究6 (A02): 
古代西アジアの文字文化と社会 -前2千年紀におけるユーフラテス中流域とハブル流域-

研究代表者: 山田 重郎 (筑波大学教授・古代西アジア史・研究の実践と統括)
連携研究者: 中田 一郎 (古代オリエント博物館館長・西アジア文献学・文献学的観点から助言)
連携研究者: 渡辺 千香子 (大阪学院大学准教授・アッシリア学・環境学的観点からの助言)
研究協力者: Nele Ziegler (フランスCNR为任研究員・西アジア文献学・歴史学的研究)
研究協力者: Stefan Maul (ハイデルベルク大学教授・西アジア文献学・歴史学的研究)

人類最古の文字文明が栄えた古代メソポタミア世界の研究は、19 世紀以来、メソポタミア中・南部に位置する諸遺跡の調査を中心に進展してきましたが、1970 年代以降、ユーフラテス中流域ならびにハブル流域の諸遺跡が発掘されるに従い、辺境と見なされていたこれらの地域の重要性がクローズアップされてきました。本計画研究は、研究代表者が解読・研究に従事するテル・タバン遺跡出土の楔形文字文書史料の分析・研究を軸に置きながら、テル・メスケネ、テル・アシャラ、ヒルベト・エ・デニエ、テル・レイラン、テル・フエラ、テル・シェイク・ハマドなどの遺跡から発見された粘土板文書を解読する研究者たちと連携して比較検討を加え、紀元前二千年紀のユーフラテス中流とハブル流域の歴史と文化を広く考察することを目的とします。テル・タバン出土文書の時代的広がりと質的多様性は、ユーフラテス中流域・ハブル流域という広い地理的コンテクストにおいて、包括的な歴史学的・文献学的研究を行う基軸として機能すると期待されます。計画研究5、7,8 などと連携し、前2千年紀の地方都市どうしの在り方、周辺の農村や遊牧民とのかかわりなどについて、極めて実証的な証拠に基づいた新たな地域史像の構築を図ります。

 

計画研究7 (A02): 
周辺アッカド語文書に見る古代西アジアの言語・歴史・宗教に関する総合的研究

研究代表者: 池田 潤 (筑波大学教授・セム語学・総括、言語学的分析担当)
研究分担者: 山田 雅道 (筑波大学非常勤研究員・西アジア文献学・歴史学的分析担当)
連携研究者: 月本 昭男 (立教大学教授・聖書学・宗教学的分析担当)
研究協力者: Shlomo Izre’el (テルアビブ大学教授・西アジア言語学・言語学的分析担当)
研究協力者: Yoram Cohen (テルアビブ大学上級講師・西アジア言語学・歴史学的分析担当)
研究協力者: Daniel Fleming (ニューヨーク大学教授・西アジア言語学・宗教学的分析担当)

周辺アッカド語は、紀元前二千年紀後半の古代西アジア全域においてグローバルな外交・通商の媒介言語として、またローカルな行政経済活動を記録する文字言語として使用された言語です。そのため、周辺アッカド語文書を読み解くことにより、我々は紀元前二千年紀後半の古代西 アジアの言語・社会・宗教に関してさまざまな事柄を知ることができます。本研究は、言語学を専門とする研究代表者と歴史学を専門とする研究分担者、宗教学を専門とする連携研究者が共同することより単一のディシプリンを越えた広い視野から周辺アッカド語文書にアプローチしていきます。より具体的には5年の研究期間内に設定したいくつかの根本問題を解明するのが本研究の目的です。特にエマル文書を中心とし、必要に応じてそれ以外の周辺アッカド語文書も援用しながら問題を解明し、そのプロセスを通して、また領域研究の他の計画研究班特に6,8 と連携しつつ、古代西アジアの言語・歴史・宗教に対する理解を可能な限り深めていきたいと考えています。

 

計画研究8 (A02):
バビロニア・アッシリアの「政治」と「宗教」-領土統治における神学構築と祭儀政策

研究代表者: 柴田 大輔 (筑波大学准教授・古代メポタミア史・統括、楔形文字資料の分析)
連携研究者: 市川 裕 (東京大学教授・ユダヤ学・ユダヤ教伝統との比較研究)
連携研究者: 井上 文則 (筑波大学准教授・古代ローマ市・ローマ帝国との比較研究)
連携研究者: 永井 正勝 (筑波大学研究員・エジプト学、言語学・エジプトとの比較研究)
連携研究者: 高井 啓介 (東京大学研究員・セム語学、旧約聖書学・西セム語資料の分析)
連携研究者: 沼本 宏俊 (国士舘大学教授・西アジア考古学・考古資料の分析)
連携研究者: 津本 英利 (古代オリエント博物館研究員・西アジア考古学・考古資料の分析)
連携研究者: 久米 正吾 (国士舘大学共同研究員・西アジア考古学・考古資料の分析)

近代西欧において成立した宗教概念、そして政教分離政策(ライシテ)を自明視する者にとって、現代まで至るイスラーム政権の国家の運営方法は奇異に見えるかもしれません。しかし、現代的視点から見た「政治的」領域と「宗教的」領域の混在は何もイスラーム国家の特性ではありません。同様の状況は先イスラーム期の西アジア諸国家にも確認できます。本研究計画は最も資料が豊富な前二千年紀後半から前一千年紀中葉にかけてのメソポタミア(バビロニア・アッシリア)に重点を置き、領域国家の領土統治と「宗教的」領域の関係を明らかにします。特に、国家運営の一環として形成された政治的な神学、そして、効果的な領土統治を目指す戦略における「宗教的」領域の具体的な様相を明らかにします。このような研究のため、国家運営の過程で作成された行政記録と神学・祭儀に関する文書の両方を含む楔形文字資料、あるいは国家によって量産された土器などの考古資料を多角的に分析し、さらに、ローマ帝国をはじめとする隣接する時代・地域の状況と比較検討します。本研究は計画研究6,7と特に密接に連携して進めていきます。