領域概要

本領域の目的

古代西アジアでは、人類史上初めて都市型社会が生まれ、都市を中心に地域の在り方が決定づけられる社会構造が広域に形成された。西アジアの都市遺構は、豊富な考古学的資料と保存性の高い媒体(粘土板)に書かれた多くの文字史料によって、都市文明の発生とその古代における変容に関して、大量のデータを提供する。本領域研究は、人類の都市との関わりの原点であり、都市をめぐる濃密な歴史的経験である古代西アジア都市の諸相について、その発生のプロセス、景観と社会的機能の変遷と多様性、環境との相互影響関係を、考古学、文献学、自然科学の学際的連携によって解明する。さらに「都市とは何か」という命題を、西アジアの隣接地域にならびに後代の西アジア都市の諸相も射程に収めて考察することで、古代西アジア都市の個性を浮き彫りにし、その後代への影響を明らかにすると同時に、現代の都市主導型文明のサステナブルな将来に向けて有用な文明論を提示する。

本領域の内容

西アジアにおける都市の諸相を学際的方法で、通時的・共時的に研究するために、A01「都市文明への胎動」、A02「古代西アジア都市の景観と構造」、B01「西アジアの環境と資源」、C01「中世~現代の西アジア都市」の4つの研究項目を設定する。研究項目A01とA02 は、前4千年紀末の南メソポタミアにおける都市の誕生に先立って、西アジア各地で都市文明に含まれる諸要素が断片的に出現していく現象を考古学的に解明し(A01)、その後のメソポタミアにおける都市文明の誕生をへて、西アジアならびにエジプトにおいて進展した3000 年にわたる都市化の諸相を考古学と文献学の協働により研究する(A02)。研究項目B01 は、西アジア都市文明を育んだ環境と資源を地球科学的・物質化学的方法で分析し、都市文明の発生と変容に環境がどのような影響を与えたのかを考究して、領域全体の底上げに貢献する。研究項目C01 は、A 群の扱う古代の都市文明をうけて、中世から現代に西アジア都市の伝統がどのように継続し、どのように変容したかを解明し、現代の西アジア都市の諸相や社会的課題を分析する。こうした諸項目を公募研究によって補足し、領域全体として西アジア都市の諸相を多角的・通時的に把握したうえで、総括班「西アジア文明論(X00)」がハブとなって、すべての研究項目が協働して、古代西アジア都市文明の特徴と後代への影響を歴史学的・社会学的・文化論的に評価し、都市・人間社会・環境の相互関係、都市の類型、といった問題を総合的に論ずる。

期待される成果と意義

古代西アジア都市文明の歴史的展開に関して、最新の研究成果を踏まえ、古代西アジア各地の多様な都市の姿を、時空間の比較格子の中に捕捉した「総論」を提示する。また、古代西アジア都市の諸相を後代の都市と対比し、古代から近現代までの西アジア都市の姿を通時的に把握する。そのうえで、「都市の本質」に関する包括的理解をめざし、現代の都市主導型文明のサステナブルな将来に向けて有用な文明論を提示する。

研究組織

研究項目A01

  • 計画研究1
    西アジア先史時代における生業と社会構造
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研究項目A02

  • 計画研究2
    古代西アジアにおける都市の景観と機能
  • 計画研究3
    古代エジプトにおける都市の景観と構造
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研究項目B01

  • 計画研究4
    古代西アジアをめぐる水と土と都市の相生・相克と都市鉱山の起源
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研究項目C01

  • 計画研究5
    中世から近代の西アジア・イスラーム都市の構造に関する歴史学的研究
  • 計画研究6
    西アジア地域の都市空間の重層性に関する計画論的研究
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研究項目X00

  • 総括班
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Copyright © 2018 The Essence of Urban Civilization: An Interdisciplinary Study of the Origin and Transformation of Ancient West Asian Cities.