都市化ともに生じた、西アジア各地における資源の都市空間への集中(食材、土、石材、金属、水など)、コミュニケーション網やテクノロジーの発達などを、西アジア各地の堆積物と遺物の分析によって明らかにし、都市の発生・変容と環境の相互関係を地球科学的・物質科学的に解明する。また、西アジア各地において環境調査・資料収集を行い、それを分析する。
「都市化」は、増大する人口をまかなうための食料・燃料・建築材など、生活を維持するための資源や威信材の集積や、それらの運搬を容易にする交通網(陸路・水路)の整備を必然的にともなう。本計画研究では、環境や地政学上の推移が古代西アジア都市の形成や衰亡に及ぼした影響を「水と土と都市の相生・相克のプロセス」という観点から考究する。堆積物、あるいは構造物・製品として残された遺物の素材から情報を読み取る物質科学的手法により、都市化にともなう資源集積システム、コミュニケーション網の整備と維持、粘土・冶金テクノロジーの発達過程などの問題を明らかにする。とくに「銀」を指標とした「都市鉱山」の形成過程の解明から、資源集積システムの発達史を明らかにする。具体的には、チグリス・ユーフラテス川流域の前7000年頃から紀元前後頃までの遺跡を中心に、1)都市形成のバックグラウンドとなった環境条件(古環境・地形・水・土壌)や都市への物質流入路条件(水路・道路網)の調査・分析、2)各遺跡出土の粘土製品(壁土・日干レンガ・土器・竈など)などの遺物の微量元素分析・組織解析・同位体分析、3)遺跡の年代別・規模別の指標値変化の解析、4)環境・金属集積・粘土・冶金技術向上からみた「都市鉱山」と古代都市の形成の解明と総括を行う。領域全体の分析部門の役割を受け持ち、各計画研究との連絡を密接に保ち領域全体の底上げに貢献しながら、西アジアの時空間にまたがる土・水・金属に関する組成・物性のデータベースを構築する。
Copyright © 2018 The Essence of Urban Civilization: An Interdisciplinary Study of the Origin and Transformation of Ancient West Asian Cities.